2012年10月

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今日も地質相談室の方からメールをもらって、「石英」「水晶」「斜長石」の判定法について教えてもらいました。
 

メール③
石英と水晶は、同一の化学組成と結晶構造を持ち、物質としては同じものです。鉱物名でいえば「石英/quartz」。「水晶/rock crystal」は歴史の古い言葉で、多面体の結晶形を現した石英(6角柱はその典型)や、ロックアイスのように透明感がある石英に対して用いてきました。「水晶」は「石英」の部分集合ということになります。

石英は通常の造岩鉱物の中ではもっとも硬く、小刀では傷をつけることができません。石英のエッジでガラスを引っかくと、ガラスに傷が付きます。また、割ると、ガラスに似た不規則な、あるいは貝殻状の断面を見せます。このことが、鑑定の根拠になります。

斜長石は、ナトリウム及びカルシウムのアルミノケイ酸塩鉱物で、基本構造を保ったまま NaSi→CaAlの置換が起こりえます。ナトリウムの多いものを曹長石、カルシウムの多いものを灰長石と呼び、両者の混合比率によって5種類の名称を使い分けます。すべての斜長石には、2方向に平面を作って割れる性質(へき開)があります。へき開面は光をよく反射するため、岩石の破断面に太陽光をあてるとちかちか光って見えます。無色透明~白色半透明である点では石英と似ていますが、へき開を示すことと、石英よりはやわらかいことが鑑定の根拠になります。安山岩には、斜長石の大きな結晶が含まれていることが珍しくありません。

昨日見せていただいた写真では、4x4cmの多角形の物質が唐突に入っていました。安山岩マグマと平衡に晶出したものならば、そこら中に入っていてもよいはずですが、周りは赤みを帯びた細粒の安山岩があるのみです。石英、斜長石のいずれであるにせよ、マグマとは非平衡な捕獲結晶ではないかと感じました。


実際に鉱物を見て触れた感じだと、①非常に堅そうな質感だったこと、②岩石への組み込まれ方が不自然な印象でした。そして、地質相談室の方に教えてもらったことを踏まえ、発見した鉱物は、マグマが地下深くから拾ってきた石英(水晶)であると決めました。

地質相談室の方には、本当に感謝です。またひとつ、登山の壮大なロマンを感じる楽しみ方が増えました。


地形学、地理学、気象学、鉱物学、宇宙科学、生物学、歴史学、スポーツ科学、医学、ダイエット栄養学。

これらで登山を科学すれば、登山をさらに楽しく奥深いものにしてくれます。

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昨日の報告の水晶(石英?)について、気になって仕方ないので、(独)産業技術総合研究所・地質標本館の地質相談室にメールして相談してしまいました。
→地質相談室


すると、早速返事がきて、その内容は以下の通りです。 

メール①
火山の噴火に際しては、その時点で液体であったマグマ、マグマ中に含まれていた固体物質、過去の火山噴出物や基盤岩の破片が飛び出します。マグマの上昇経路のどこかで基盤にあるチャートや石英脈を引っ掛けてくる可能性があります。
溶岩の中に水晶(低温石英)が含まれていた場合、通常それはマグマから直接に晶出したものだとは考えません。


メール②
浅間山の石英?の写真を拝見しました。
安山岩の中に含まれた白色鉱物で、輪郭が直線的で、その内部にはひびが多いことが分かりました。

直線的な輪郭(六角形に近い)は、造岩鉱物の自形結晶を思わせます。直線的な罅が奥まで連続していれば(罅は平面的ということ)、へき開をもつ鉱物であることを疑います。硬さはどうだったでしょうか。石英はへき開がなく、硬さも小刀の刃先より圧倒的に硬いです。

石英と判定する前に、斜長石の可能性はないかを検討したい気がします。
斜長石なら、安山岩~玄武岩マグマの中で大きく成長しうるので、説明が楽になります。ちなみに、北海道白老町のクッタラ火山では、5cmx6cmx3cmもの大きさの灰長石の斑晶が見られました。

実物を手に取ることができれば鑑定の難しくない鉱物なのでしょうが、写真のみで申し上げられるのはここまでです。
ご健闘を祈ります。

専門用語が並んだ難しい内容で、最後に、健闘を祈られてしまいました。

今回、初めて天然の水晶を発見しました。

岩に組み込まれている白いもの、これが天然の水晶です。市販されている『クリスタル』がどのような状態で発見されるのか分かりませんが、きれいと感じられるものではなく、不自然な印象でした。
観察中にたまたまネイチャーガイドの人が通りかかって、水晶であること、そして浅間山では珍しいことだと教えてくれました。
⑥水晶



水晶が見つかった場所は、外輪山の右隅、三ッ石からJバンドに向かう登山道です。
水晶発見場所_page0001


三ッ石からJバンドの方を見上げた写真です。この上部の崖で見つかりました。
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崖を横断する登山道を歩いていたら、
①水晶

大きな落石が登山道に転がっていたので、
②水晶

その岩の性質を観察していたところ、
③水晶

何かキラキラ光るものを見つけ、
④水晶


それが水晶でした。
その大きさは4cm×4cmくらい。
⑤水晶



黒斑山の外輪山は、火砕流堆積物(下の写真)、ごつごつした安山岩溶岩(下2枚目の写真の崖下部)とつるつるした安山岩溶岩(下2枚目の写真の崖上部)から構成されていましたが、水晶が見つかったのはつるつるした安山岩溶岩です。
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水晶のでき方について調べてみると、

①水晶は、地下深くの岩石の隙間で、何百度という高温の熱水で満たされたところにできる。
②熱水の中に溶け込んでいるケイ素(Si)と酸素(O)が結晶化して水晶となる。
③水晶の成分は熱水の温度や圧力が下がると溶け込んでいられなくなり、まわりの岩の壁にくっついて小さな結晶を作る。
④水晶は何億年、何万年もかかって成長するとも言われているが、正確なところはわからない。
⑤岩の隙間が狭いところでは、成長を続けるうちに隙間がぎっしり水晶で埋まってしまったりすることもある。ぎっしり埋まって水晶の結晶が見えなくなったものは水晶ではなく、石英と呼び分ける。

ということが分かりました。

⑤が気になったのでもう一度見直してみると、ぎっしり埋まっているから石英に区分されるかも知れません。また、地下深くではなく、地上に噴出した溶岩内部で水晶ができるのかということも疑問です(噴出した溶岩はすぐに冷えてしまうはず。けれど、つるつるした安山岩だから比較的ゆっくりと冷えたのかも)
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調べていくうちに2、3の疑問が生まれてしまいましたが、水晶と信じて、逆に浅間山で見つけたことは大発見だと思っておきたいです。


次回は、「面白い温泉を発見」です。

前回の続きで、前掛山山頂と下山時の眺めを報告します。

右が前掛山2524mで左が浅間山2568m。前掛山が1108年の噴火によって崩壊した後、その窪みの中に浅間山ができたようです。
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前掛山から望む浅間山。標識は浅間山(前掛山2524m)となっていました。
2-16


浅間山は黒で前掛山は赤い噴出物からできています。酸化の程度の違いでしょうか。
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時折、噴煙が上がっていました。山腹には車両が通ったような跡があります。後で調べてみたら、ブルトーザーでこの道を通り、火口を観測するようです。
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黒斑山2404mの外輪山と湯ノ原高原、賽ノ河原です。右奥はヘリスキーが楽しめる四阿山2354mです。
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山頂に1時間ほどのんびりしたあと、湯ノ原高原と賽ノ河原に降りてきました。
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右に大きな岩石があります。浅間山もしくは前掛山の噴火によって、ここまで飛んできたのかもしれません。
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→カラマツの黄葉の他の写真はこちら


Jバンドへの登りです。この途中の花崗岩の崖で天然の水晶を発見しました。次回、報告します。
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千人岳2319mからの浅間山の眺め。朝の時は逆光で見づらい状態でしたが、昼を過ぎると良い眺めでした。右奥の三角の山は剣ヶ峰2280m。黒斑山と同様、2万3千年前の古浅間山の山体崩壊から助かった山です。
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前掛山の山頂をアップしてみると、多くの登山者が歩いていました。
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外輪山の斜面です。白い斜面に一本の線が見えています。おそらく、ニホンカモシカ等の獣道だと思います。
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朝のうちは気付きませんでしたが、外輪山の尾根も綺麗な紅葉でした。
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2cmほどのカラマツの赤ちゃんも黄葉しています。
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黒斑山2404mからの浅間山です。右の山が先ほど触れた剣ヶ峰です。
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トーミの頭2340mからの浅間山です。左の岩は黒斑山2404m。
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この写真は仙人岳付近で撮りました。鹿島槍ヶ岳、五竜岳、そして唐松岳がかろうじて確認できましたが、今回は遠くの山がはっきりと見えません。
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穂高連峰、槍ヶ岳もこんな状態です。真ん中の凹みは大キレットです。これはトーミの頭から撮りました。
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トーミの頭からは中コースで帰りましたが、展望は良くなく、カラマツの木や落ち葉を楽しみながらの下山でした。
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浅間山、色々と学べて楽しい山でした。唯一やり残したことは、地熱を感じること。後から知ったことですが、山頂では地面が温かいようです。

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次回は水晶の発見を報告します。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2012.10.21
コース:前掛山→湯ノ原高原→賽ノ河原→鋸岳→仙人岳→蛇骨岳→黒斑山→車坂峠
 天気:晴れ  

  前掛山 2524m 9:05-9:55
立入禁止板 2440m 10:05
前掛山中腹 2150m 10:35-11:00
登山口分岐 2090m 11:15
   Jバンド 2240m 12:05
  仙人岳 2319m 12:30‐12:35
  蛇骨岳 2366m 12:50
  黒斑山 2404m 13:10
トーミの頭 2340m 13:20-13:35
  車坂峠 1973m 14:10

★行程時間5時間05分 
☆歩行時間3時間30分
☆昼休み25分 ☆山頂休憩50分 
☆途中休憩20分



前回はカラマツの黄葉だけを紹介しましたが、今回は浅間山(前掛山)山頂までの行程を紹介します。


今回の交通手段はレンタカー。職場のソフトボール大会が終わったあと車を借りて、そのまま登山口に向かいました。少し上半身が筋肉痛でした。

道中は、間違って夜の碓氷峠の旧道を走ってしまい、走り屋にいつ煽られるかビクビクしながらの運転となりました。登山口に着いたころには、精神的に疲労し、首も筋肉痛。

車の中で仮眠しましたが、朝の車中は予想以上に厳しい冷え込みで、少し頭痛気味。それ以上に誤算だったのが車の芳香剤の香りで、朝から車酔いの状態でした。

そんな体調でしたが、いざ山に入るとスイッチが入って元気いっぱい。これは体が元気になる「山病」です。山病を知らない方は、一度かかって欲しいと思います。


前置きが長くなりましたが、まず朝焼けの写真です。

①浅間山と朝焼け
(右のパノラマ写真と地図には撮影場所を示しています。詳細はクリックして拡大して下さい。)
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槍ヶ鞘2250m付近で太陽に会えました。


②黄金の太陽
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今回の朝焼けもいい感じでした。


③トーミの頭2340mから見える浅間山(前掛山2524m)
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ここから眺めるご来光、最高かも。次回、チャレンジする価値はありそうです。


④黒斑山2404m
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2万3千年前、古浅間山の山体崩壊によってできた山頂です。看板より先は断崖絶壁。


⑤蛇骨岳2366mからの眺め
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群馬県側も良い眺望で、左に見えている湖は田代湖です。


⑥仙人岳2319mと虎ノ尾2290m
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山壁には、溶岩と火砕物の互層からなる成層火山の断面が見えます。


⑦仙人岳2319m
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奥に見えているのは黒斑山2404m。


⑧虎ノ尾2290と鋸山2254m
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古浅間山の斜面と、えぐられるように斜面がなくなってしまっている様子が印象的でした。2万3千年前の山体崩壊は、どれほどの規模の噴火をともなったのでしょうか。富士山で山体崩壊が起きないことを祈るばかりです。


⑨賽ノ河原
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虎ノ尾2290mから2100mの賽ノ河原を眺めました。約200mの高低差があります。うすく見えている細い線は登山道です。


⑩Jバンド2240m
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ここで外輪山の縦走が終わり、一気に賽ノ河原に下りていきます。


⑪鋸山の崖
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溶岩が冷えて固まった安山岩の崖です。かなりの高さがありました。帰りの時、ここで嬉しい発見がありましたが、その報告は後ほど。


⑫カラフルな斜面
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この斜面はカラフルな絨毯のようでした。


⑬前掛山への急登
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賽ノ河原、湯ノ原高原に降りた後、やがて前掛山に登り始めました。古浅間山の山体崩壊の跡地に、新たな火山活動の活動でできた火山です。頻発する噴火の影響からなのか周囲の木が少ないため、見晴らしは最高です。


⑭鬼押出溶岩
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途中で鬼押出し溶岩の端が見えました。1783年に噴出した溶岩流です。


⑮草
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山腹の至る所に、同じ草が生えていました。一斉に風になびいて、キレイでした。


⑯火山弾
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亀の甲羅みたいな模様の火山弾を発見しました。この模様は、燃えた状態で噴出した火山弾が冷える過程でできたと思われます。


⑰不思議な石
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全く別の性質の岩石同士が合体しています。調べたら、地下を上昇してきたマグマがその途中で周囲の岩石を巻き込んでしまうことでできるみたいです。


⑱立入禁止看板
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ここを超えて火口に向かう人がいました。噴火が起きて死んでしまったら、いったい誰が危険を冒して遺体を回収するのでしょうか。自己責任のつもり?


⑲前掛山の山頂
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前掛山山頂も外輪山のようになっています。1108年の大噴火でこの内側がなくなり、その中に現在の浅間山ができたようです。


⑳避難シェルター
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噴火に対して、このシェルターで助かるのでしょうか。2mほどの岩石が飛んできたら、ひとたまりもないような気がします。


次回は、前掛山からの眺めと下山です。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2012.10.21
コース:車坂峠→黒斑山→蛇骨岳→仙人岳→鋸岳→前掛山
 天気:晴れ  

  車坂峠 1973m 5:30
トーミの頭 2340m 6:25-6:30
  黒斑山 2404m 6:45
  蛇骨岳 2366m 7:10
  仙人岳 2319m 7:25‐7:30
   Jバンド 2240m 7:50
立入禁止板 2440m 8:40-8:45
前掛山山頂 2524m 9:05

★行程時間3時間35分 
☆歩行時間3時間20分
☆途中休憩15分

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